2012-01-07

「Temple Grandin」

Think of it as a door.
A door that's going to open up onto a whole new world for you.
And all you need to do is decide to go through it.

「Temple Grandin」という映画をみた。この先ずっと胸に残る一作になろうと思う。
テンプル・グランディンは実在するアメリカの動物学者、コロラド州立大学教授。動物学者として食肉処理施設を非虐待的なものに設計し直し、現在、アメリカとカナダの半数の施設がこれを採用している。グランディン自身はこのことを、「私が自閉症だったから、家畜の気持ちが理解できたのだ」と説明している。グランディンは、高機能自閉症だ。

映画は、高校を終えて、大学へ進むはずの休暇から始まる。グランディンは大学へ進みたくない、高校には学習の楽しさを教えてくれたカーロック先生(元NASA勤務の科学者、実在の人)がいる。冒頭の言葉は、一歩を踏み出せないグランディンにカーロック先生がかけた言葉だ。「目の前にあるのは、新しい世界へ進むためのドア。必要なのは、そのドアを開ける決意だけ」。

実際のグランディン教授がTEDで行ったスピーチの中で、映画では、自閉症が自身にもたらした(特質として、あるいは制約としての)ビジュアルシンキングが大変よく描かれている、と話している。メイキング映像をみても、現場まで足を運んで積極的に協力されたことが分かる。その正確さと誠実さが、この映画の輪郭を力強くしている。

映画の話にもどして・・・

大学で、修士課程で、その後の研究過程で、そして成果を食肉処理場に売り込むまで、グランディンはドアを開き続ける。完成した処理場に、大学時代の唯一の理解者である友人を招いてこう伝える。

I don't want my thoughts to die with me.
I want to have done something.
I know there are a lot of things I can't understand,
but I still want my life to have meaning.

さらに、前述のTEDスピーチの中で、「自閉症の子供達に、興味深いものを見せて、スイッチを入れてあげたい」と話している。自閉症のシンポジウム等で啓蒙活動を続ける第一人者、というのが、グランディンのもうひとつの顔だ。

映画の最後に、あるシンポジウムのシーンがある。聴衆として参加した場で、未だ混沌とした無理解に触れて思わず声を発し、「自分は自閉症である」と、当事者として話し始める。

Everyone worked hard to make sure that I was engaged.
I mean, they knew I was different, but not less.
You know, I had a gift.
I could see the world in a new way.
I could see details that other people were blind to.
My mother pushed me to become self-sufficient.
I worked summers at my aunt's ranch.
I went boarding school and college and those things...
Those things were uncomfortable for me at first,
but they helped me to open doors to new worlds.

聴衆から「全て聞かせてほしい」と声が起こり、グランディンが登壇する。もう一つの新しい世界への扉を開いて。

果たしてこの映画は、がんばる自閉症の人々を描いた映画なのだろうか。私は、全ての、新しい世界へ進む勇気を欲する人と、大切な誰かに勇気を与えたい人のための映画なのだと思う。少なくとも私自身、その両者の立場から勇気付けられた。カーロック先生に背中を押されて大学へ進み、何度も涙を流しては乗り越え、迎えた卒業式、「今日ほど、自分ひとりで生きてきたのではない、と思い知った日はない」とグランディンは語る。そうした周囲への感謝の気持ちが、全ての人を支え得るこの映画に繋がったのだと思う。

「Carouselの歌のように」と、下手くそな歌で卒業式のスピーチは締めくくられる。

When you walk through a storm
Hold your head up high
And don't be afraid of the dark.
At the end of the storm
Is a golden sky
And the sweet silver song of a lark.
Walk on through the wind,
Walk on through the rain,
Though your dreams be tossed and blown.
Walk on, walk on
With hope in your heart
And you'll never walk alone,
You'll never walk alone.

前後する時間軸の編成や、本人お墨付きのビジュアルシンキングの映像化、クレア・デインズを始めとする俳優陣の演技(図らずも、前エントリーのジュリエットから連続クレア・デインズポストになりました)、音楽や、気持ちを表現する効果音。素晴らしく何かが結集した、奇跡のような映画でした。

(参考)
[Trailer] Temple Grandin
[Wikipedia] テンプル・グランディン
[TED] Temple Grandin: The world needs all kinds of minds

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